日本呼吸器学会の専門医取得には、
日本内科学会の専門医取得から3年間呼吸器学会に所属している必要がありましたが、H24年度の改訂により日本外科学会専門医にも受験資格が広がりました。
さらに、日本外科学会専門医に関しては、3年間の呼吸器学会所属義務もなかったため、初年度の年H24年度は外科系の受験生が多かったようです(私が受験したのもH24年度)。
(正確には、外科系はH24年度の入会により、H25年度も受験資格がある)
これには、専門医数(会員数)を増やして、発言力を増したい呼吸器学会の思惑があるのかもしれません。
肺がんが「がん」死因の第一位であり、肺炎での死亡者数が脳卒中を追い越した現在でも、呼吸器学会の専門医数は5000人程度で、消化器学会17000人、循環器学会12000人に比べると、まだまだ少数です。
学会としては、しばらくは専門医数の増員に積極的と考えられます。
<受験資格>
①内科または外科の専門医取得から3年以上(3年が過ぎてから申請可)
②専門医取得から3年間以上、呼吸器学会に所属(外科は特例措置中)
③3年以上認定施設での研修
④治療経験報告
症例の報告+サマリーのコピーが必要です
症例の内容については内科、外科で異なります(詳細はホームページで)
⑤必須手技の申請
気管支鏡など一部の手技についてはカルテのコピーを添付
⑥医療安全セミナー受講証明
⑦呼吸器関連の業績(10年以内)
学会発表3編+論文3編 (いずれも共著可)
⑧臨床呼吸機能講習会参加
⑨非喫煙者である事の証明書(自筆)
間違いがあるかもしれないので、必ずホームページを確認して下さい
さて、申請書の締め切りは7月1日なのですが、注意する事があります
①あらかじめ申請書を取り寄せなければいけない
(4月頃よりはじまる)
②臨床呼吸機能講習会の参加が義務になっています
H24年度は4月頃に申し込みが始まりましたが
ゴールデンウィーク前にはキャンセル待ちになりました
講習会は3日間(水〜金)、みっちりあります(1日だけとかは ×)。
→受験資格を確認して、4月には受験に向けて資料を整理する必要があります
呼吸器科の先輩に聞いたところ、書類審査のチェックはそれほど厳しくないようです。書類審査の結果は9月ころ(受験の1ヶ月前)に来ます
<試験について>
H24年度は10月7日に試験がありました
受験者数は500人くらいでしょうか、合格率は例年80%以上を基準にしているようです
(第13条(筆記試験難易度調整) 筆記試験は一般問題と実地問題から構成され、合格率80%台を目標とする。また、10%程度を過去の問題から出題し、その正答率から難易度の微調整を行うことがある。試験後、正答率20%以下の問題、識別指数が0.1未満でかつ正答率60%未満の問題については削除することがある)
<受験直後に書いた感想>
今年(H24)から、外科学会専門医の人にも呼吸器専門医の門戸が開かれました。初めての制度であったので、どのような問題になるかが不安でした。想定外だったのが内科と外科で問題が違うことでした(一般問題は70題のなかで30題が別問題で40題は共通、実地は50題のなかで30題が共通)。
そのため、外科専攻であれば、サルコイドーシス、ANCA、喘息、IPなどの内科的疾患知識は殆ど問われませんでした。また、臨床呼吸機能講習会の内容も3-4題程度で、マニアックな問題はありませんでした(コンプライアンスがどうのとか、理論がどうのとか)。
個人的には正岡の呼吸器外科が有用なのではと思いました(多分、半分くらいは正岡を精読していれば解けるのでは)。あとは、がん治療認定医テキストに類似した問題が3-4題出ていると思いました。逆に、実地でも一般でも術後管理や治療方針については臨床経験の問題で、事前勉強のやりようはないように感じました。(なので、内科と問題が別々だったのですが、勉強していなくても外科系の問題に全く歯が立たないということはありませんでした。しかし、自信をもって答えられる問題は少なかったように思います)。
来年もし再試験となれば、やはり内科疾患を完全に捨ててしまうのは怖い気がします。今年は共通問題を含め、外科重視の印象があったので、来年は揺り返しがくる可能性はあります。
もし時間が十分にあれば、①呼吸器専門医テキスト、②各種ガイドライン(咳嗽、薬剤性肺炎、IPの取り扱い、、、、)、③正岡の呼吸器外科、そして④専門医試験用問題集2冊(呼吸器ベーシックポイント、New専門医を目指すケースメソッド(専門医テキスト、試験問題集の3冊は内科の先生から薦められた。ただ、個人的にはNew---は一番優先度が低いような気がする)を勉強するのが良いと思います。
ただ、時間がないのであれば、思い切って①正岡、②呼吸器ベーシックポイント、だけでも不戦敗にはならないと思います。
呼吸器外科専門医試験に比べると問題の難易度は低く、呼吸器外科専門医試験から時間が経っていなければ、呼吸器外科の先生は、外科系の問題についてまぁまぁ取れるのではないでしょうか。呼吸器外科以外の外科系の先生には、ちょっと厳しい気がします(と言う意味では、試験問題は良く作られているとも言えます)
ホームページから推測すれば、呼吸器学会としては専門医数を増やす方針のようなのでしばらくは、門は狭くないような気がします(願望も含め)。
試験時間は足りないということはありませんでしたが、実地については結構ギリギリで、全部終わった時には残り15分くらいだったので、ゆっくりしすぎると終わらなかったかもしれません、実地の最後の方は試験の疲労もあり根気が必要です。開始は10時15分でしたが、10時くらいからは説明が始まっており、30分前には席に着いておいた方が良いと思います
<試験問題の一部> ノートに書き留めているのが数十題あるので、随時載せていきます
一般問題
正しいのはどれか
① 肺胞上皮は2層でできている
② 肺胞の数は5000個である
③ 肺胞の表面積は体表面積の10倍である
④ I型肺胞上皮細胞が障害されるとII型細胞が増殖する
インフォームドコンセントでふさわしくないのはどれか
① できるだけ専門的な言葉で、正確に話す
② 説明した内容は文書で渡し、コピーを保存する
③ 拒否があった際には説明した内容と拒否したことを記録する
血液のpHを規定するのはどれか
① CO2
② O2
③ HCO3-
④ K
肺転移で正しい組み合わせはどれか
① 骨肉腫—若年
② 甲状腺がん-リンパ管症
③ 胃癌-結節
④ 肝臓癌-単発結節
癌による高カルシウム血症で正しいのはどれか
① 飲水制限を行う
② VGCC抗体が原因である
③ サイアザイドを使用する
④ ビスホスホネートの効果は発現するまで数日かかる
縦隔胚細胞腫瘍と腫瘍マーカーの組み合わせで適切でないものは
① セミノーマ-HCG
② 胎児性癌-CEA
③ 癌奇形腫-AFP
④ 卵黄のうほう癌-AFP
⑤ 絨毛がん-HCG
実地問題
中年男性。直腸がん術後3年。胃癌術後2年。CT(右下葉に1.5cmくらいの協会明瞭な結節)。最も考えられるのはどれか
① 直腸癌からの転移
② 胃癌からの転移
③ 胸膜陥入がみられる
慢性関節リウマチで治療中。1ヶ月前よりメソトレキセートを投与開始。CT(すりガラス影)。正しいのはどれか
① 投与期間が長ければ重症度が高い
② リンパ球刺激試験で原因薬物の推定が可能である
③ 定期的な肺機能検査で早期発見ができる
④ 通常は薬剤開始から3ヶ月以降から生じる
高齢、男性。胸水貯留あり。胸腔穿刺でTP 1.8、、、、(漏出性の所見)。行う検査はどれか。
① 細胞診
② 結核検査
③ 心エコー検査
中葉に腫瘤があり肺癌が疑われた。TBLBを行ったところ出血したため、気管支にファイバーを固定して止血中である。適切な体位は
① 仰臥位
② 腹臥位
③ 坐位
④ 右側臥位
⑤ 左側臥位
若年男性。右肺のcoarse cracle。胸部CT(3枚。冠状断で右下葉の肺分画症があり、多分肺葉内)。適切な治療は
① 肺動脈塞栓
② 右肺部分切除
③ 右下葉切除